顔面神経麻痺の種類
末梢性顔面神経麻痺
顔面神経は12本ある脳神経の7番目の神経で、第Ⅶ脳神経とも呼ばれます。この顔面神経は、脳幹の橋部の顔面神経核から始まり、側頭骨の中を通って耳の後ろ(茎乳突孔)から側頭骨外に出て、耳下腺の中を通って顔面の表情筋に分布して筋肉を動かしています。また、顔面神経は、涙腺や唾液腺の分泌、味覚、聴覚にも関係しています。
この顔面神経に障害が発生すると、顔面にいろいろな麻痺が発生します。顔面神経核から末梢の顔面神経の損傷により生じた麻痺を総称して、末梢性顔面神経麻痺といいます。末梢性麻痺の特徴として、顔の片側だけに麻痺症状を生じます。
末梢性顔面神経麻痺の原因としては、いくつか考えられますが、全体の約70%はベル麻痺(あるいは特発性麻痺)と帯状疱疹ウイルスによるハント症候群が原因です。
- ベル麻痺(単純性ヘルペスウイルスI型の感染で起こるといわれています)あるいは特発性麻痺(原因不明)
- 帯状疱疹ウイルス(ハント症候群)や細菌の感染によるもの
- 外傷
- 耳下腺癌や脳腫瘍による、またはその手術に伴うもの
- 中耳炎や外耳炎などの耳の炎症によるもの
- その他、先天性や後天性のもの(糖尿病や膠原病や多発性硬化症、ギランバレー症候群などの全身の疾患に伴うものなど)
また、症状としては、表情筋の麻痺のほかに、大錐体神経、アブミ骨筋枝、鼓索神経の機能障害なども生じる場合がありますので、涙腺機能検査、アブミ骨筋反射検査、顎下腺唾液流量検査、味覚検査などによって、神経管内の神経障害部位の診断を行うことが可能となります。しかし、特殊な場合を除いて治療上の重要性は低く、回復の程度などを推察するには主に筋電図検査が用いられます。
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