クラニオフェイシャルサージャリー

 主に、頭蓋骨および顔面骨の形成、修復を行う外科をクラニオフェイシャルサージャリー(頭蓋顎顔面外科)といいます。頭蓋顎顔面外科は読み方が難しい字ですが、「ずがいがくがんめんげか」または「とうがいがくがんめんげか」と読みます(*これは、頭蓋骨は「ずがいこつ」あるいは「とうがいこつ」両方の読み方があるからです)。
頭蓋骨や顔面骨は、脳など頭部の重要な臓器や口腔・咽頭などの器官を支持したり保護しています。先天的な異常による疾患や、外傷や頭頸部の腫瘍切除など、外見上の変形の問題だけでなく、頭蓋骨の欠損がある場合には、脳に対する保護のため再建が必要です。

 

先天性異常症

 先天性異常症の治療内容は、それぞれの疾患の程度によって大きく異なります。また、成長との兼ね合いによって、手術に適した年齢まで待つ必要があることもあり、治療には長期間を要することが多くなります。

(1)頭蓋顎顔面骨形成異常 (ずがいがくがんめんこつけいせいいじょう)

 クルーゾン病、アペール症候群、小顎症などの疾患は、通常、稀な疾患です。このような疾患に対して、クラニオフェイシャルサージャリーを専門としたグループが治療に当たっています。

クラニオフェイシャルサージャリーのイラスト クラニオフェイシャルサージャリーの3DCT
クルーゾン病の未発達な頭蓋骨・顔面骨を 前方移動する場合の骨切り位置 3D-CT像で骨切り術と頭蓋・顔面骨の 前方移動をシミュレーションして、 手術法を決定します

(2)頭蓋骨縫合早期癒合症 (ずがいこつほうごうそうきゆごうしょう)

 頭蓋骨縫合早期癒合症とは、何らかの原因で胎児の時に頭蓋骨縫合が通常よりも早い時に癒合した結果、頭蓋骨が正常に発育できなくなり、赤ちゃんの頭蓋が狭く変形する疾患です。放置すると変形が残ってしまうばかりでなく、脳組織の正常な発達が抑制されるので、適切な時期に頭蓋骨の形成手術が必要となります。手術によって狭くなった頭蓋が拡大・修正されるので、脳の発達への影響が少なく、また、外見上の改善も期待されます。

(3)顔面裂 (がんめんれつ)

 顔面裂といってもすべてがナイフで切られたように顔が裂けているわけではなく、単に凹んで見えるだけのものもあります。口唇裂以外の顔面裂はごくまれにしか発生しません。 顔面裂の中では口から目に至る斜顔面裂が代表的ですが、他には顔の中央部の裂(正中裂)、口を横切る裂(横顔面裂)なども見られます。

 治療内容は個々の裂変形によって大きく異なります。しかし、皮膚の形成術だけでなく、口唇や眼瞼の再建手術、脂肪や骨などの組織移植、頭蓋骨や顔の骨の移動などの高度の専門的な治療が必要です。

(4)第1、第2鰓弓症候群  (だいいち、だいにさいきゅうしょうこうぐん)

 鰓弓(さいきゅう:または咽頭弓)とは、妊娠4週初め頃の胎児にできてくる構造体で、顔面や頚部のさまざまな器官(特に骨と筋肉)を作るもと(原基)になるものです。第1、第2鰓弓症候群とは、第1鰓弓および第2鰓弓に何らかの異常が発生し、主に下顎や耳、口などに変形を生じる先天性疾患です。片側だけに起こることが多い(約80%)ので、顔面は非対称となります。特徴的な変形は、耳(小耳症や耳介変形など)と下顎部(巨口症や咬合不全など)です。

 個々の変形に対する形成手術が行われますが、変形が多岐に渡ること、成長との兼ね合いによっては、手術に適した年齢まで待つ必要があることもあります。全ての治療には長期間が必要です。

顔面の成り立ちイラスト
鰓弓のイラスト(顔は第一鰓弓(IIの部分)と第二鰓弓(IIの部分)からできてきます)

       

頭蓋・顔面骨変形と欠損:外傷や頭頸部腫瘍(とうけいぶしゅよう)切除後

 外傷や腫瘍切除後などに頭蓋骨や顔面骨の欠損した状態です。頭蓋骨・顔面骨の欠損により、外見の変形が起こります。特に、頭蓋骨の欠損の場合は、脳に対する保護のためも、再建が必要になります。

 自家骨(自分の骨)やアパタイトなどの人工骨により、欠損部の補填、再建を行います。使用する材料により、いろいろな長所や短所がありますので、患者さんの状態に適した方法で再建が行われます。3D-CTを使って作成した人工骨により、非常に大きな複雑な骨欠損でも良好な結果を得られるようになりつつあります。

 

 

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