顔面神経麻痺の治療
慢性期の治療-陳旧性顔面麻痺
1年以上経過し麻痺が残存した症例に対しては、表情筋が萎縮(脱神経性萎縮といいます)して回復しなくなっています。医学的には、急性期に対して、慢性期という言葉を使いますが、顔面麻痺では「慢性顔面麻痺」とは言わず「陳旧性顔面麻痺」と呼びます。
陳旧性顔面神経麻痺の原因は、先にも述べたようにベル麻痺やハント症候群の一部(これらには不完全麻痺や異常共同運動を伴う麻痺が多い)や、脳腫瘍、耳下腺腫瘍、外傷などによる顔面神経切断などです。
また、先天的に生じた麻痺や、分娩時に発生する麻痺などもあります。形成外科では古くより様々な方法で、できるだけ自然に近い表情が獲得できるような手術法が開発されてきました。静止状態での左右対称性の獲得(静的再建)、運動時の左右対象性の獲得(動的再建)や、麻痺性兎眼に対する閉眼機能の獲得を目的とした治療を行います。
当科では、波利井教授が1974年に世界で初めて成功した、マイクロサージャリーを使った神経血管柄付き自家遊離筋肉移植による「笑い表情」の再建を中心に、麻痺のタイプや部位によりさまざま方法を組み合わせて、複雑な顔面の表情をできるだけ回復させる「Total Facial Reanimation(TFR)法」を行っております。
症状は麻痺が起こった部位によって異なります。また、手術方法も各症状によって適応が変わります。
詳しい治療法および手術法は、「次の話題:手術」をご参照ください。
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